バイクに乗って旅をする。
もうなんだかあたり前のことになっきた。
何となくそれじゃいけないなあと思いつつ、
この夏も北海道に行くことにした。
5回目の北海道。8年間で5回だから、かなりの頻度であり、
既におおかた行っているという気がする。
でも、まだ行ける気力がある。だから、行くことにした。
生きているのだから。


昨年は、4年ほど続いた夏の北海道ツーリングを一時中断した。夏といえば北海道という惰性に何となく抵抗を感じたのだ。それでも夏の南は辛い。涼しい北を走りたい。そんなわけで、東北をぐるりと回った。本州最北端の大間崎と竜飛岬の両方を制覇した。それはそれで楽しかったが、北海道のあの広大な自然は望むべくもなかった。一年置いて、またこの夏は北海道を計画した。今回の目玉は「旭山動物園」だ。えへへへっ、と照れてしまいそうだが、まあ一度は見ておくべきだろう。そして、2年前に行った池田のレストラン民宿「フンペ大熊」。前回は、4大蟹のコースだったが、次に来るときはぜひステーキのコースを経験して欲しいというオーナーの言葉に惹かれ、そのステーキコースを味わおうと思ったのだ。帰りは、2泊ほど東北で過ごす予定にした。秋田と蔵王。蔵王はバイク仲間の知り合いがペンションを経営していて、やはりバイク乗りだという。年齢的にも同じようなもので、一度お会いしたいなあと思っていたのだ。北海道で4泊、東北で2泊。6泊7日の旅利計画が見事に完成した。
さて、今回のツーリング・レポートは、「ツーリング入門」をタイトルにした。いままでずいぶんたくさんのツーリングを経験して、その経験を「これからバイクツーリングをしたい」という方の参考にしてもらおうというつもりだ。ちょっと生意気かなあ、とも思うが、本当に参考程度にしていただければ幸いだ。私も、バイクでのツーリングは最初かなりの不安があった。特に何泊もする長期のツーリングは、途中でなにが起こるわからない不安で、北海道に行くことすら地の果てへの大冒険のような気がした。いまでは、平気でどこにでも行く。不安もほとんどない。そうなって初めて、行った先の様々な内面に触れることができる。場所、場所の空気を感じることができる。これからロングツーリングをしたいという方は、ぜひぜひご一読いただければ幸いだ。少しでも参考になることを書いてみようと思う

ロングツーリング入門(1)
旅の準備
私は、旅の成功は出発前の準備で大方決まってしまうと思う。思いついたらフラリと旅に出る。行く先もその日任せ、という旅も魅力的だ。でも、私はそうしない。できれば、何から何まで計画し、全て準備して出かけることにしている。旅のリスクを最小限にできると信じるからだ。準備といってもいろいろある。ではまず、コースと宿泊の準備から。

コース決定、宿の予約
あっちにも行きたい、こっちにも行きたいと日頃から妄想を膨らましている。テレビで旅番組など見ると、よし今度はあそこへ行こうなどと思う。ただロングツーリングに出かけられるのはサラリーマンである以上とても限られる。春のゴールデンウィークと夏休みの二度のチャンスだ。お正月休みは寒さと雪のためにバイク出てかける気にはなれない。春は南へ、夏は北へと決めて7〜8年は、5、6泊のツーリングをしている。今年の夏は北海道と決めていた。コースの決定は、行こうと決めた「旭山動物園」「フンベ大熊」「蔵王」という点を結ぶことから始まる。私の場合、たいていまず一番遠くまで行ってしまう。それから戻るように旅を続け、最後は一気に東京を目指すパターンが多い。今回も目的地の一番遠くは、「旭山動物園」のある旭川だ。旭川までの最短は、やはり仙台からフェリーということになる。バイクで走って、一日で旭川まで行くことは不可能ではないが、かなりの強行軍だし、着いた時間には動物園はやっていない。どうせ出発の翌日に行くのなら、余裕をもって行くほうがいい。仙台から苫小牧までのフェリーは、毎日就航していて、仙台発が20:00、苫小牧着が翌日の10:45だ。これはとても都合のいいスケジュールで、フェリーでのんびりして、眼が覚めると北海道というわけだ。午前中に着くのでその日のうちに北海道のどの地へも何とかたどり着ける。宿代も、高速代も、ガソリン代もいらない。早く、経済的に北海道に入るルートと言うわけだ。東京から旭川までのコースは決まった。旭川で一泊。翌日は、十勝の池田町を目標とした。ここに入るルートは大きく二つ。富良野を回るか、三国峠を越えるかだ。今回はどうしてもオンネトー湖を見たかったので、三国峠越えをルートとした。上士幌からずいぶん戻ることになるが、時間的には十分可能なので新しい点オンネトー湖を足した。

池田からは、一気に函館に向かう。北海道滞在3泊ではこれくらいが限界だ。函館で一泊、翌日青森に渡り、秋田に向かう。秋田には友達もいるので一杯やろうというわけで、最後の日に蔵王だ。
こうして行きたい場所を線で結び、宿泊地を決め宿の予約を取る。たいていはビジネスホテルだ。全国各地に安くて、綺麗なビジネスホテルが点在している。これを利用しない手はない。キャンプで全国を回る仲間もいるが、私はロングツーリングではキャンプはしない。毎日テントを張るのか面倒だし、柔らかいベットや風呂、トイレを考えるとわずか5000円程度でゆったりできて、そこそこのアニメティもあるビジネスホテルのほうが快適で、疲れも取れる。ほとんどが街の中心にあるので、食事や買い物も便利だ。キャンプのほうが安上がりかもしれないが、天候なども考えると、多少の贅沢は許してもらいたいのだ。ビジネスホテルはだいたい1ヶ月前にインターネットで予約する。地名に「ビジネスホテル」といれると驚くほどのビジネスホテルが検索できる。私はじゃらんと楽天とトクーの会員になっていて、どれかで予約するか、直接ビジネスホテルの予約サイトで予約する。今まで一度も間違いはない。きちんと予約が取れている上に、「バイクで行くので駐車場よろしく」と書いておけば、ほとんどのところでスペースを確保してくれた。ビジネスホテルのよい点は、カーナビにデータがあり電話番号だけで正確な場所が特定できる点だ。だからほとんど迷わない。こうして決まった目的地と宿は、すべて一冊のファイルブックに綴じて旅の間持ち歩く。ここに、領収書なども後で綴じこむ。旅の記録ブックが出来上がる。

バイクの準備
町で走るバイクとロングツーリングのバイクは、別にどこも変わらない。同じバイクだ。ただ、旅に出て便利な装備はしているほうがいいに決まっている。まずは、荷物の収納だ。
いつも使っているバックをバイクの後部座席に縛り付けて出かける。それでも全然かまわない。ただ、毎朝ゴムひもとの格闘はなかなか疲れるものです。できれば、まず後部座席の後ろにキャリアーをつけて、そこにパニアケースのマウントを取り付ける。そして、大き目のパニアを付けるとロングツーリングは一気に楽になります。私も現在の大型バイクにして、最初に北海道に出かけたときから後部のパニアだけは付けていきました。荷物はこの中に、紐でギュッと縛れるビニール袋に入れてある。ホテルに着いたらその袋だけもって入る。朝は、パニアにポンと放り込んで、パカンと閉める。雨にも濡れず、荷崩れする心配もなく、全く便利で安全なのだ。
それでも、最近はこの後部のパニアはできる限り空の状態で旅に出るようにしている。空にいておくことで途中途中、とても便利なのだ。ちょっとした買い物はここに入れる。タンクバック、ヘルメットやグローブも一時的に収納する。鍵がかかって外からは見えないので、まあ旅の途中の一時ロッカーだ。荷物の本体は、サイドバックだ。以前は布製を使っていた。これも、現在のバイク以前から使っているので10年以上も使ったことになる。まだまだ頑丈で十分使えるが、最近ハードケースに変えた。クラウザーのサイドパニアをヤクオフで落とした。2万円程度でアタッチメントもついていた。これをなんとかバイクに取り付けた。とても便利だ。この中にやはりビニール袋で荷物を入れる。ケースははずさず、荷物だけを持ってホテルに入る。よけいなものは入れっぱなしだ。ただ、バイクの横幅がかなり大きくなる。いままではバイクのハンドル幅に納まっていたが、このパニアはそれを上回る。気をつけていないと、ぶつかることはないにしても、こすることは十分考えられる。狭いところ、止まるときなどは相当に気を使う。いつも付けているぞと言う自覚が必要なのである。
後部のパニアが40リットルあまり、左右が30リットルづつ。合計でやく100リットルの収納ができる。このほかにタンクバックもつけるのでまあ、キャンプでも全ての道具が収納できるだろう。ここまでやってしまえば、春、夏のツーリングであれば、十分だ。

荷物の収納の次は、様々なバイクの装備だ。
まず、カーナビ。最近はバイク専用の小さなものもたくさん出ている。私はもう5年も使っているクルマ用のコンパクトカーナビだ。CD仕様からDVD仕様にグレードアップしたが、バイク用としてはかなり大きい。大きい分表示がよく見える。どんなものであれ、ロングツーリングにカーナビは欠かせないと思う。あれば便利というものではなく、ないとかなり不便という感じだ。私など、カーナビがなければどこにも行けないくらいカーナビに頼っている。カーナビ以外の地図を持たないまま出かけることもある。途中でカーナビが壊れたら、完全に迷子だ。私の場合は、タンクバックの中にカーナビを入れ、電源はバイクのバッテリーから直接取っている。この電源でカーナビの他、タンデムの場合は後部と会話ができ、携帯電話や無線機も通じるアンプをつなげ、同じくタンクバックに忍ばせている。タンクバックにはこの電源をオンオフできるスイッチをつけ、タンクバックというよりは、秘密基地みたいになっているのだ。音は、このアンプからヘルメットの中のスピーカーに導かれる。カーナビも携帯も、無線も、そして取締りレーダーの警報音も全てヘルメットの中で再生されるのだ。しかし、これは今まで何年もかけて作り上げてきたシステムだ。必要に応じてだんだんに整備していけばいいと思う。私が始めた10年前に比べれば、今は素晴らしく進化した機材がたくさん出ている。わりと簡単にできるのかもしれないが。
そして、カーナビの次はETCだ。ETCは、必ずあるほうがいい。これだけで気分がかなり軽くなる。料金所のあのわずらわしさは、それを経験したものでなくてはわからないだろう。雨の中の北海道の千歳から旭川方面に向かうときの料金所の面倒は、ETCがあれば全て解決なのだ。ETCは、クルマよりむしろバイクにこそ必要なものだと思う。絶対に付けていただきたい。

●装備
まあ、泊まりはほとんどビジネスホテルか民宿なのでキャンプに比べれば装備といっても普通の旅行とそんなに差があるわけではない。着替えや下着などは常識の範囲内だ。タオルや歯ブラシなども普通の旅と変わりない。ただ、昼間走っているときと、夜ご飯などを食べに外出するときとは服装はガラッと変えている。バイクの装備はやはりどこか重く、ごつごつしている。夜はもっとリラックスしたいので、ジーンズではなく綿のゆるゆるズボンだし、履物も簡単なサンダルを持ってきている。このサンダルは必需品だ。バイクのブーツのまま一杯飲んでの食事はリラックスしない。1000円くらいの安物で十分だ。そして小さなバックを用意する。今使っているのは、なにかウィスキーが入っていた袋だが、これに財布やタバコやカメラを入れてブラブラと持ち歩く。そのためのバックだ。
昼間走っているときの装備は、かなりしっかりめがいい。ツーリング用のジャケットに、できれば革のパンツだが、夏はとても暑くなる。まあ、しっかりめのジーンズだろう。ジャケットの肩と肘にはプロテクターが必要だ。このために割高のバイク用ジャケットを買うわけだから、必ずつけておく。ツーリング時の靴も最低くるぶしが隠れるものがいい。そして防水であれば、まず安心だ。防水の話が出たところで、雨のお話をしよう。
バイクの大敵は雨かもしれない。あめは、それまでの装備に決定的にダメ出しをする。晴れているときとは全く違うことを要求されるのだ。だから全く別に考えなくてはいけない。
雨は、水が降ってくるのだ(当たり前だ)。だから濡れる(当たり前だ)。まず、バイクが濡れる。これは、まあ汚れるくらいで放っておくほかない。次に乗ってる人間が濡れる。これにはレインコートだ(誰でもわかる)。しかしそれだけでは解決しないのだ。手はどうする。靴はどうする。手は、防水のグローブをするわけだが、もともと防水のグローブがいいと高めのグローブを買ってみたものの、私の場合手に汗をかきやすいのか、めちゃくちゅ蒸れる。中が汗でびっしょりになったりする。夏用の普通のグローブは、雨にはひとたまりもない。夏でも手が濡れると体が冷える。特に高速を何時間も走るときは、これでかなり疲労する。だから、夏グローブとは別にレイングローブをもつことにしている。ただ、なかなかいいものがない。いろいろ試した結果、いまの所ゴム手袋に落ち着いている。これは完璧に濡れない。不思議なほどあまり蒸れない。ただ、色がブルー、しかもかなり派手なブルーなりが難点だ。すれ違いざまに片手を挙げて挨拶を交わされたときなど、こちらも手を挙げるのに躊躇する。かなり恥ずかしい。それで、最近黒のゴム手袋を発見し、買ってみた。ただ天然ゴムなので、手にゴムの匂いが残る。これまた困ったものだ。
防水のブーツといっても、やはり限界はある。機関銃の弾のように大粒の雨が降り続く環境では、やはり靴の中にしみこんでくる。防水ブーツはいったん水が入ると、流れ出てくれないから溜まる一方だ。これにはやはりブーツカバーが最強だ。雨からバイク乗りを守るには、これだけの装備が必要なのだ。
次に荷物も濡れる。今ではパニアケースになったので、荷物にカバーを被せることはなくなった。以前は、サイドバックにカバーをかけていた。しかし、外側だけを守るかなりひ弱な仕組みだ。カバーの中に水も溜まった。時々止まっては、カバーの水を捨てなくてはならない。そして、タンクバックにもカバーをかける。この中にはカーナビが入っているので、濡れたらカーナビーが故障してしまう。カバーをかけてとりあえず守る。しかし、タンクバックには財布やタバコも入っている。高速の料金所などでは、大変な思いをした。いまではETCなのでかなり楽になった。
バイクで雨の中を長距離は知るノウハウは、経験が生んでくれると思う。ただいえる事は、十分に準備しておくことだ。そして決して雨を甘く見ないことだ。たいした雨じゃないからと、いい加減にレインコートを着て痛い思いをしたことがある。胸元が空いていて、そこからあっという間に雨が入った。雨は胸元からズボンに移り、ズボンの雨は靴の中に入り込む。全身びっしょりになる。しかも、高速でわずか30分ほどだ。レインコートはしっかり着る。それ以来私は守り続けている。
雨から人と菜も津を守られる装備があれば、暑さ寒さの装備はたいしたことはない。春から秋までの季節で真冬でない限り、まあちよっと暑いかなというくらいの装備があれば、何とかなる。後は安全のための装備だ。ジャケットにプロテクター、しっかりとしたグローブ、しっかりとしたヘルメットとブーツをきちんと装備しよう。これでロングツーリングの準備は整った。後は、走りながら、いろいろなことを紹介しよう。

 

 

■さあ、いよいよ出発だ。1日目東京〜仙台〜フェリー
一日目は、この所北海道への定番となった仙台までの高速だ。もう何度目だろう。仙台にはバイクで何度も行っている。だから、何だか近く感じ、不安も何も全くない。仙台から苫小牧行きのフェリーも、もう3度目か、4度目だ。要領もわかっている。最低1時間前に滑り込めば予約している限り必ず乗れる。それ以上早く行っても受付もしていない。まあ、東京からは5時間見ておけば、いつももっと早めに着く。つまり家を昼ごろ出れば、夕方の出航には十分間に合うのだ。
予定通り12時に家を出た。外環はいつも通り練馬から乗る。ここまでが40分ほどかかる。東京という泥沼を抜けるための時間だ。環七、目白通りと進む。ところどころ渋滞で、かなり暑い。外環に乗ってしまうと走りぱなしになるので、その前に休憩し、ジャケットなどをその時点で着ればいいのだが、それもかなり面倒で家を出るときから来ているジャケットが特に暑い。それでも夏用だから風は通るのだが、渋滞で流れが止まってしまっては無力だ。我慢しかない。外環に乗ってしまうと30分もかからずに東北自動車道に入る。それまでの40分が嘘のようだ。そこから1時間半ほどで宇都宮に届いてしまう。都内とのあまりの時間感覚の差に最初は戸惑ってしまう。宇都宮を越えると東北自動車道は2車線になる。ここからが単調な走行が続くことになる。坦々と走る、これが極意だ。あまりものを考えず、自分はいま最高に楽しいことをやっているのだとひたすら思う。すると自然に楽しい気分になる。見える景色も変わってくる。

白川に着くとそこはもう福島県だ。まだそれほど走った気はしていないのに、もう3つ目の県になっている。飛ばそうと思えば、いくらでも飛ばせる。そういう楽しみ方もあるかもしれない。でも、これから先1週間の予定を立てて旅に出ているのだから、危険なことはなるべくしない。できるだけ制限速度付近でおなしく走るのがよい、と考えつつ大人しく走っていたつもりが、さらにのんびり走っている数台のクルマをほとんど無意識に追い越した瞬間、白いセドリックが追い越し車線に飛び出し、赤いランプを回転させた。「ああ、やっちまったか」。ふっとスピードメーターを見ると、140キロは出ていた感じだ。何がおとなしく走るがよいだ。結局けっこう飛ばしているじゃねえか。覆面パトカーは、先導するかたちで前を走り、付いてくるように指示された。都合よくすぐ近くにパーキングエリアがあり、そこで敢え無く御用となった。
パトカーから降りてくるのはかなりの年配ぽいおっさん。目が合うなり大声で、「ごめんなさーーい」と言った。おっさんは、ニコニコ笑いながら近づき、「最初に言っておくよ。警告だけだよ。いや、それにしてもかっこいいねぇー」と言ってくれた。こちらは、それだけでほっとする。どんなに起こられても我慢する気になった。「だめだよ、福島県は白のセドリックだよ。抜いちゃダメ。ちゃんと覚えておきなさい」。「いや、私もね若い頃乗ってたのバイクに。いまはスクーター。こういうでかいのに乗りたかったよ」。話すことは、バイクのことばかり、免許書を見せて、チラチラとメモだけされて、「気をつけて行ってね」と優しい言葉をいただき無事に解放された。あーー、よかった。そうか、気が付かないうちに覆面を制限速度以上で抜いていたんだ。そりゃあ、捕まえないわけには行かないよな。でも、切符を切られずにすんだのは、まさにラッキー。今回も良い旅になる予感がした。よかったーー。
それからは、白いセドリックばかりを気にして走った。言われて注意してみると、それから2台ほど発見した。おお、聞いておいてよかった。慎重に走ってつかまらずにすんだ。ツーリングとスピード違反は、戦いのようなものだ。高速道路というあれだけいい道を100キロで走れというのがそもそも無理な気がする。場所によっては、60キロとか80キロの制限もある。一方1300ccのエンジンは、4000回転も回せば100キロを軽く超える。ああ気持ちいいなあ、という速度が140キロぐらいだったりする。だから坦々と走っていると無意識に制限速度を超える。無茶なスピードで走りたいとは全く思わないが、バイクの普通の性能程度では、はからずも走ってしまうのだ。制限速度を超えて走るなとは言わない。無理をしないで自分のペースで走ることだ。ただ、捕まらないように走らなければならない。頭の片隅に、いつも覆面やレーダーを意識していなくてはいけない。そのためにレーダー探知機はかなり有効で、いままで北海道で3度助けられた。おかげで、ツーリング中の検挙は今のところない。
一度注意されると、切符は切られなくてもかなり反省する。まだまだ時間にも余裕があったので、のんびり走ることになった。途中何度かガソリンも補給する。サビースエリアを2つおきくらいに止まり補給すれば十分だ。一度の補給で180キロが目安でそれ以上になるときは早めに入れる。X4は、ガソリンタンクが小さいのが欠点で、せめて250キロは一度に走りたい。それでも、その分休憩できるので体力的にはちょうどいいのかなあと考え、休むたびにゆっくりとタバコをすう。

4時半頃には、仙台に着き仙台南道路でフェリー乗り場に近づく。フェリー乗り場に近づいたら、塩釜に住むゲールさんに連絡することになっている。去年も、その前もフェリー乗り場まで送りに着てくれた。いつも、酒をもらう。ことしもおいしいお酒を持ってきてくれるはずだと、楽しみにしている。着いてみるとゲールさんはまだのようだ。何しろ去年とは違うバイクで来るはずだ。新しいバイクを買ったのだ。それも、あっと驚くほどのスポーツバイだ。スズキ・バンデッドS/ABS。いままでのアメリカンとは全く違う世界に突入したのだ。人の気持ちは、想像するのが難しい。まして、とんでもないことを考えるこのオヤジは、何が飛び出すか全く不思議だ。ホームページに新しいバイクを買うと書き込んできたときには、まさかと思った。金に任せてハーレーダビットソンでも買うのかと思った。ところがこのバイクだ。しかもそのバイクで、たった今表れようとしているのだ。
おっおっおっ、やって来た。紛れもなくゲールさんだ。間違いなくバンデッドだ。フェリー乗り場の駐車場を大きくユーターンして、バイクから降り、きちんと前向きに駐輪した。几帳面だ。やあやあ、とばかりに駆け寄って、さっそく挨拶を交わす。もちろん新しいバイクについての話だ。ここまでは、20分程度だと言っていたのにサイドパニアも、トップパニアも付いている。今にもフェリーに乗って旅立ちそうな出で立ちだ。中には案の定お酒が入っているだけ。ありがたい話だ。バイクに合わせて、ウェアーもヘルメットも新調したそうだ。全てが新品だ。中味はいささか古い。そのコントラストがなんとも可愛らしい。一体このバイク、この装備でどこへ行くのだろう。

ロングツーリング入門(2)
フェリー乗り方ノウハウ
長距離のツーリングに欠かせないのが、フェリーだ。最近はずいぶん数が少なくなってきて、なかなか思い通りには行かなくなった。北海道へのフェリーは、東京からであれば大洗からの便か、ここ仙台からの便しかない。昔は東京から釧路の便があった。あの「幸せの黄色いハンカチ」で武田哲也が使った便だ。もう10年も前に廃止になってしまった。あとは、新潟まで走って小樽への便がある。しかし時間的にこの便は使いにくい。
新潟→小樽は、新潟発10:30、小樽着4:30だ。東京から新潟発10:30に乗るためには、朝5時くらいには出なくてはならない。また、小樽に朝4:30についても眠いばかりで身動きが取れない。
大洗→苫小牧は、大洗18:30、苫小牧13:30着がある。まあまあのタイムスケジュールだが、到着の13:30がちょっと遅い。そこから動き始めても札幌どまりかもしれない。でも、かなり有力なフェリーだ。
仙台→苫小牧は、仙台20:00、苫小牧10:45である。これはありがたい。11時頃に苫小牧に降り立てば、その日のうちにかなり遠くまでいける。高速を使えば、旭川なんて午後一だ。釧路もそれほど無理ではない。頑張れば、宗谷も行けるだろう。従って、ここ数年はこの仙台・苫小牧便を利用している。東京を午後ゆっくり出ても、夕方に仙台に着けばいい。朝起きると苫小牧なのだ。
フェリーに乗るにはまず予約が必要だ。混んでいる時期なら1ヶ月前には必ず予約したい。バイク1台くらいなら何とかなるだろうと思っていても、旅客が一杯になると予約できない場合があるのだ。大抵のフェリーは、旅客にいくつかのグレードがあって、それで料金が少しづつ異なる。2等のいわゆる大部屋であれば、満員でも押し込んでくれるが、ゆっくり眠れるA寝台とかB寝台になるとかなり早めに一杯になってしまう。一ヶ月前くらいから予約を受け付けるのでさっさと予約したほうがいい。予約が取れれば、後は当日少なくとも1時間半前には乗船手続きを終わらせたい。カウンターで乗船書類に書き込み、車検証と一緒に受付に出すことになっている。でも、今まで一度も車検証を見せろといわれたことはない。バイクで750cc以上は一番高い料金なので、車検証を見る必要はないのだろう。逆に、250ccや400ccとなると、料金が若干安いので、車検証を見せろといわれるかもしれない。考えてみれば、この受付さえ通過してしまえば、大型も中型も小型も確かめるプロセスはない。例えば、1300ccのバイクを持ち込んでも、車検証を250ccの物を用意しておけば、乗れてしまうのじゃないだろうか。(こういう悪いことをしてはいけない。)実際には、仙台・苫小牧で2500円しか変わらないので、ビクビクするだけ損だと思う。乗船手続きで乗船券とバイクに貼る荷札が渡される。乗船券には、部屋とベットの番号が書かれているはずだ。半分は乗船のときに取られる。残りは、下船のときに取られるのが普通だ。

さて、乗船手続きが終われば、バイクを乗船待ちの駐車スペースに停めて、乗船案内の放送を待つだけだ。ただし、この時、どんなに早く着いていても列のトップだけは避けたほうがいい。5、6番のあたりに停めておいて、乗船のときに前のバイクに着いて行けるようにする。すべて前のバイクが実験台になってくれるので、様子がよく分かるのだ。フェリーによっては、乗船してから上の階のデッキに回されたり、デッキでUターンさせられたりする。そのとき、前に何台かいると良い見本になるのだ。前のバイクたちがするとおりにすればいい。自分がトップだと、焦ってしまう分失敗も多くなるというわけだ。
乗船の放送があるまで、荷物を整理しよう。長距離フェリーは一泊するので、なにかと荷物が必要だ。でも、余分なものは持っていく必要はない。この乗船を待っている間に、手ごろな袋にでも持っていく荷物をまとめておく。私の場合は
1.着替え・・・船の中でくつろげる服。できればそのまま寝られるもの。
2.サンダル・・・バイク用のブーツは、船の中をフラフラするのには不向きだ。サンダルは絶対必要。
3.洗面具・・・当然だろう。
4.風呂用品・・・石鹸・シャンプーなども必要。フェリーの風呂はかなり気持ちいい。
5.おつまみ類・・・船の中でも買えるが、好みのものがあれば調達しておく。酒も。
6.暇つぶしのゲームや本など。ただし、揺れると本どころではなくなる。
7.貴重品バック・・・財布やカメラ、携帯電話などを持ち歩くことになるので、ひとまとめのバックがあると便利。
まあ、最低限これくらいかなあ。大きなビニール袋にひとまとめにしておく。あとは、ヘルメットも持たなくてはならないので、なるべく小さくしておきたい。
待っていると放送があるはず。「バイクでご乗船のお客様。乗船を開始いたしますのでバイクにお戻りください」。これを聞いたからすぐに乗船と思ってはいけない。大抵はその場から移動させられて、訳のわからないところで待たされる。貨物系の大型トラックが荷物を積み込み、その後がバイクなのだが、時には普通車が先の場合もある。こうなるとかなり待たされる。ようやく順番が回ってくる。あらかじめ前のバイクに着いていけばいいような順番なので、落ち着いて付いて行く。船に乗るステップは確かに鉄製で、なんだかスベスベ滑りそうだが、ハンドルを真直ぐにして、アクセルを一定にして走り抜ければ、全然大丈夫。船の中も、あちこちにクルマを固定するための半球状のでこぼこがあるけど、気をつけて避ければ問題ない。中では係員が誘導してくれるのでその通りに進む。どんなコースを走らされても、前のバイクの動作をよく見て、それをまねすればいい。いよいよ停める段になったら、一度止まって係員の示す場所にゆっくり入ってゆく。隣のバイクとかなり間を開け気味ぐらいでいい。サイドスタンドを出せば、終了だ。ギアは一応ローに入れておく。
さあ、あとは船でのんびりだ。あらかじめ準備した荷物だけを持って、乗客デッキに上ろう。ここで注意しておくのは、自分のバイクを停めた場所をちゃんと覚えておくことだ。フロアの階数や番号、方向も大切だ。翌日デッキに下りると、クルマが一杯でどこに停めたか分からなくなることがある。覚えておこうという意識があれば、大抵は大丈夫。ほっとして、ボーっとしていると危ないのだ。