掲示板仲間のririさんX4に真っ白で、明るいヘッドライトが点いていた。
それって何?と聞くと「HID」だと言う。よく分からなかったが、明るい。
ririさんの旦那のKOJIさんが、着けてくれるという。ありがたい。
早速お願いしてヘッドライト交換をした。電球だけかと思ったら、大間違い。
かなりの大改造が、私のX4に施され、
それはそれは明るい未来が、開けたのだった。

■電球じゃないんだ。蛍光灯なんだ、HIDは。
HIDとは、High Intensity Dischargeの頭文字で、ディスチャージ・ヘッドランプと言うもの。普通のハロゲンランプは、ハロゲンガスの中でフィラメントが光っているもの。ところがHIDは、フィラメントがなく、インバーター・イグナイター・ユニットという装置が、12Vの電源をなんと2万Vまで高電圧にして、バルブの中の電子を放電によって光らせるという。説明だけでも凄いけれど、その性能もなかなか。まず、ハロゲンより明るい。光の色を選べる。フィラメントが切れることがないので、寿命が長い。しかも、省電力。ハロゲンが400時間に較べ、2000時間の寿命。55Wの消費電力に較べ、35W。いいことずくめなのだ。ただし、車検が通るかどうかは分からないと言う欠点がある。それで、車検終了を待って取り付けたのだ。
KOJIさんのお奨めで、ケルビン値は、SW(スーパーホワイト)の4,300K。ケルビン値というのは、まあ、光の色で、明るさには関係ない。ケルビン値が上がるとどんどん白からブルーの色になる。あまりにブルーの色だと、返って暗く感じるそうだ。確かに黄色の光は、コントラストが強く感じられて、明るく感じる。フォグランプが黄色いのもそのせいだ。だから、4,300Kでいいと、さすがのプロは言う。素直に従うことだ。メーカーは、全くのお任せで、サンヨーテクニカ製を選んでくれた。サンヨーテクニカは、なかなか怪しいメーカーで、取締レーダー探知機なんかも作っている。あまり法律を気にしない企業姿勢がかなり興味をそそる。
10月の雨の中、その日お休みのKOJIさんが、わざわざ自宅までバイクを取りに来てくれた。会社の秘密工場で、取り付けてくれるそうだ。半日はかかる大作業なのだ。

■HIDの全容はご覧の通り。これを見ただけでもいろいろ取り付けなきゃならないことだけは分かる。ランプだけ変えりゃいいと言うものではない。これを取り付けて配線するなど、私にはできっこない。専門家に任せちゃうのだ。
一番でかいのがイグナイター。これは、シート下後部の空間に納めた。中くらいの大きさが配電盤(?)。フロントフォークに固定。ちっちゃいのが、ランプのソケット部分。これがケースに入りきらないので、ヘッドライトのアウターカバーは、穴が開けられた。
パッケージは精力剤風。これが、サンヨーテクニカの特徴。

■ここから先は、KOJIさんがやったこと。
HIDの部品は大きく3つに別れている。ライトの部分と、配電盤の部分、そしてイグナイターの部分。ライトの部分は、当然ヘッドライトの電球の部分に着く。ところが、電球の後ろにかなり大きなソケットの部品があって、それがヘッドライトのケースの中に収まらない。そのためにヘッドライトのカバーを少し切断して、ソケット部分が収まるようにする。そして、配電盤の部分は、フロントのフォーク部分に固定する。イグナイターは、シート下の後部空間に固定する。それから、点灯時にバッテリーにかなりの負担がかかるので、エンジン始動と同期させないよう、ハンドル部分にスイッチが付く。このスイッチを入れて初めてヘッドライトが点くのだ。昔のバイクみたいだ。これらを全部配線するのだけど、そのためにはまず、X4のシート、タンク、そして私の場合は、カウル、ヘッドライトを取りはずさなくてはいけない。これだけでも大変な作業だという気がしてしまう。私などがやれば、タンクが逆さに付きそうだ。
こうして裸の状態にしておいて、各部分を装着してゆく。この配線がKOJIさんの場合実に見事で、後からではどこに配線したのか、全然分からない。上手に、丁寧に線を這わしている。いままで、駐車用のフロントホイールのロックを入れていたシート下の後ろ部分も、わずかに1/3程度イグナイターが占領したが、うまくロックが入るスペースが残った。ヘッドライトのカバー部分は、少し切り取られてしまったが、全く見えない部分であり、切り取られても何の支障もない部分なので問題無しだ。
実はこの作業、私が全部見ていたわけではない。KOJIさんの説明と写真とで、勝手に語っている。ふふふふ、無責任なのだ。でも、そんなに間違っていないし、写真は本物だから、分かる人が見れば、分かると思うのだ。

■シート、タンク、カウルが取り外され、すっかり裸にされた我がX4。持ち主としては何だか恥ずかしい。私にもこんな姿を見せたことがないのに、他の男に裸にされるなんてと、馬鹿なことを考えてもしかたがない。KOJIさんは、どうも裸にするのが好きらしい。
しかしこうしないとハーネスの処理が美しくできないのは当然。できあがりは、元のままだった。良かった、良かった。
■ヘッドライト部の後ろ側を横から見たところ。後ろの大きな四角がソケットの部分。これが大きいので、ヘッドライトのアウターカバーの中に入らない。このソケット部分を削るわけにはいかないので、必然的にアウターカバーを加工することになる。加工といっても、大きく穴をあげてしまうのだ。
■穴を開けられ、何とか収まったソケット部分。ちょっと痛ましい感じがするが、明るさには変えられない。ここに穴が空いていて、雨が入ったとしても、「ハーネス部分だけだから、大丈夫」とは、KOJIさんの言葉。ここまで来たら信じるしかない。

■スイッチを入れると、光が闇を引き裂いた。
届いたバイクを早速実験。エンジンをかけた後、スイッチを入れると、「ジジーーーッ」と音がして、光がともる。1、2秒でフワッと明るくなって行く。ぎょえーーーっ、まるで違う。いままでのぼんやりとした黄色い光ではなく、刃物のように鋭い真っ白な光が、闇を引き裂いた。道路の目の前の部分はもちろん、回りの部分も鮮やかに明るい。暗闇の中に、光のトンネルを描いた感じだ。上向きにすると火の明るさは、歴然となる。30mほど先の道の突き当たりの壁が、明るく照らし出される。壁に書かれた落書きさえ浮かび上がる。残念ながら、その時のテストはそれまで。実際に走ることは出来なかった。

■写真上がハロゲンヘッドライト。下がHID。当たり前だが、HIDの方が明るい。色が白い。光の束も太い。バイクの時計をよく見ると、0:01から3:03までかかっていることが分かる。3時間2分かかっていると言うことだ。KOJIさんでもこれだけかかる。もしくは途中で休憩が2時間はいっているのか、不明。
しかし、我が家からバイクを持っていったのは、朝9時だ。この日KOJIさんは会社は休みだと言っていた。午前中何していたのだろう。天気が良ければ、ツーリングも疑われるが、例によって雨だった。ツーリングに行ったとも思えない。となると、他のカ所を改造してくれていたのだろうか。もしかしたら、エンジンが新品になっていたりして。そんなわけはない。
しかし、見れば見るほど明るい。この写真いんちきじゃは、インチキじゃないと疑われそうだが、撮ったのはKOJIさんだ。そんな器用なことが出来るはずもない。

■これが配電盤だ。何のためにくっついているのか分からないが、これがないと多分ライトが点かないことは容易に想像できる。ここに付いていてもなんの干渉もなく、問題なし。しっかり働いて欲しい。
■手元スイッチ。エンジンをかける時は「オフ」にしておかなくてはいけない。一度に急激な負荷がバッテリーにかかることを避けるためだ。しかし、ヘッドライトを「切る」と言う習慣がなくなって久しいため、忘れがちになりそう。今のところ珍しさのためかセーフ。消し忘れて、セルモーターを回すとどうなるかは、まだ不明。ririさんのX4で実験したい。
■これがイグナイターという装置。12Vを2万Vに変える機械だ。つまり、12円が2万円になるのだから、凄い働きをしていると思う。120円が20万円になるには、かなりの苦労がいる。そう思うとシートの下に入れるなんてちょっともったいない。しかし、綺麗に収まっている。

■甲府、東京まで100kmの高速と15kmほどの下道。
夜走ることはあまりないのだが、日が短くなってきたせいか、6時を過ぎると暗くなる9月中旬、甲府まで、ほうとうを食べにいこうというツーリングに参加した。この日は、そんなに遅くならないだろうと思っていたが、幸いにも(?)中央高速が20kmの渋滞で、甲府を出て間もなくヘッドライトの実力を体験する機会に恵まれた。
もともとバイクのヘッドランプは、昼間から点灯しておくことが推奨されているため、エンジンをかけると同時にヘッドライトも点灯する。だから、暗くなったから点けようと言うのではなく、暗くなったら事前に付いているのが分かると言う性格だ。さすがに晴天の昼間は、いかにHIDでも乗っていてヘッドランプの明るさを意識することはない。スイッチが別になったため、エンジンをかけてからヘッドランプを点けるが、点けたかどうかも分からない。しかし、信号などで、トラックやタンクローリーの後ろに止まり、バンパーやタンクに映った自分のバイクを見ると、ヘッドランプの明るさが明らかに違うことが分かる。点いていると言うより、光っている感じがちゃんとしている。これくい明白だと、昼間でもバイクの存在をアピールできて、他のクルマも警戒してくれると思う。昼間ヘッドライトをつける意味は、このHIDで何倍にも有効になっている。安全も確保されるというわけだ。
甲府から東京への帰り道、甲府手前のトンネル辺りから、クルマの数が増え、大月に行くまでに渋滞となった。時間がどんどん経過して、夕日が沈み、辺りが暗くなり始める。その頃から、バイクの目の前の5〜10mの辺りは、白い光の束を感じ始める。ランプが点いていることが明らかに分かる。これだけなら、明るくなったとは言えそれほど劇的な変化とは言えない。高速道路上の正目卯もかなり明るく、他のクルマのヘッドライトも道路を照らしているので、暗さで恐怖を覚えることはないからだ。だから、暫くはHIDを点けていることも意識していなかった。それが、むむっ、違うぞと感じるのは、トンネルの中だ。証明があるとは言え、トンネルの中はヘッドライトをつけることを前提に設計されている。だから暗い。そこにHIDを点けたまま進入すると、いままで経験したことのないライトの明るさを感じる。走っている自分のほぼ真横からトンネルの天井を通り反対側のほぼ真横まで、光の線がバイクと共に走る。その先は、HIDに照らし出されたトンネルが続き、30〜50m先までを見える範囲にしてくれる。上向きに変えると、はるか離れたクルマのテールランプが反射する。この安心感は、いままでのランプでは全く味わえなかった。くっきりとした光が、光の存在を主張し、単に明るさではなく、見えると言うことに貢献している。
辺りがもう真っ暗になってから、渋滞、ノロノロの中を走っていても、手前の明るさは全く違っている。光の束が、視線と一緒に走る。たとえ小さな石が高速上に転がっていても、容易に発見・回避できる明るさだ。明るさは反面陰をもっことになる。ヘッドライトに映し出されて石は、長い陰を道路に描く。それがはっきりと凹凸を教えてくれるのだ。渋滞を通り越し、少し走れるようになると、白い光の束を追うように走る。高速道路の照明がある内は道路の起伏やカーブも照明がガイドとなってくれるが、相模湖周辺の中央高速は、かなりのカーブの連続でありながら、まったく照明がなくなる。ヘッドライトだけが頼りだ。クルマのテールランプもカーブによって見え隠れしてしまう。ヘッドライトが映し出すセンターラインと路側帯のラインが向かう方向を教えてくれる。HIDは、かなり遠くまで、この白いラインを暗闇の中から浮き出してくれる。おそらく、真っ暗でも50m先までは辛うじて確認できる。しかし、50mは、速度の速い高速道路では数秒先の世界だ。見えてからコーナに対応しているのでは間に合わない。前にクルマがいない場合は、上向きにしてみる。さすがに凄い。はるか彼方まで、白いラインが浮かび上がる。これなら大丈夫。昼間と同じくらいの距離が確認できる。しかし、上向きはなかなか使えない。結局高速道路の照明のない夜道は、用心してスピードを落として走るほかにはないのだろう。
ヘッドライトは明るいに越したことはないのは当然だ。しかもHDIの場合は、消費電力が低く、寿命も長く、明るいという利点がある。明るさについては、使用してみて十分確認できた。昼の自己主張としての明るさも、夜の走行での明るさも、現在のところ最高峰だろう。しかし、いかに明るくとも、昼間の晴天時とは較べ物にならない。視野も限られる明るさである。明るい分安心感も増すが、集中力や、注意力にも油断が出やすくなる。明るくなった分スピードを上げたのでは、危険はさらに増していると言わざる得ない。いままでと同じ走り、同じ集中力で走ってこそ、明るくなった安全性が増すのだ。それが分かってもらえる人には、ぜひお勧めしたい物である。